祐雫の初恋

「ご自身で運転されるのでございますね。

 少々驚いてございます」

 
 祐雫は、薔薇色に輝く麗華の美しい横顔に見惚れて、

麗華の嫉妬心を全く感じずにいる。


「そう、

 わたくしにできないことはなくてよ」


 麗華は、今までにできないことや手に入れられないものはないと

確固たる自信を持っていた。


 ところが祐雫に慶志朗のこころを奪われて、全ての自信は失墜していた。


「麗華さま、スピード感があって楽しゅうございます。

 爺の運転は、いつも安全第一でございますもの」


 祐雫は、車外の風の音を聞きながら、軽快な気分に浸っている。


「怖くないの」


 麗華は、このまま祐雫を道連れに、何かに激突したい衝動に駆られていた。

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