祐雫の初恋

「ええ、麗華さまの運転を信じてございますもの」


 祐雫は、信頼しきった瞳で、麗華へ無邪気に微笑みかける。


 麗華は、祐雫が怖がるのを期待していたのに、

反対に喜ばれて拍子抜けしてしまった。


「まぁ、わたくしと会うのは二度目でございましょう。

 何故そのように信じられるの」


 麗華は、祐雫の憧れの微笑みにも苛立ちを覚えた。


「あら、不思議でございますね。

 確かに麗華さまのことは何も存じておりません。


 でも、私は、はじめてお会いした時に

 麗華さまが好きになりましたの。

 ただ、それだけでございます」


 相変わらず祐雫は、麗華を信じきって、無邪気な笑みを返す。


「わたくしを好きですって」


 麗華は、驚きの声を上げた。


「失礼でございますが、

 このようにお美しい麗華さまとお話させていただけて、

 嬉しゅうございましたの。


 最先端の女性って、

 感じでございましたもの」

 
 祐雫は、憧れの眼差しを向ける。


「まぁ、あなたって、不思議な娘ね」


 麗華は、並木道の傍らに急停車した。

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