祐雫の初恋

「祐雫さんは、慶志朗がお好き」


思わず麗華は、問いかけた。


「はい。憧れの殿方にございます」


 祐雫は、麗華に遠慮しながらも、自身の気持ちをそのまま声に出す。

 麗華から慶志朗が海外留学をすると聞いて、

哀しく淋しい気持にもなった。


「憧れなの。

 慶志朗とお付き合いしたいのでしょう」


 麗華は、慶志朗と祐雫が、既に交際をしているものとばかり

思い込んでいたので、拍子抜けした気分になっていた。


「まぁ、麗華さま。

 私は、まだ十七でございますし、

 慶志朗さまのお相手は務まらないように存じます。


 憧れてございましたら、

 少しずつ麗華さまのような淑女に

 成長できそうな気がいたしますの」


 慶志朗は、麗華や琳子のような淑女に相応しく、

祐雫には未だ遠い存在であるように感じられた。



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