祐雫の初恋
「そう」
(この純真さが慶志朗には新鮮なのだわ。
わたくしは、慶志朗に愛されるのが当たり前だと思って、
疑わなかったもの)
と麗華は、自身にないものを改めて祐雫から感じとった。
「今日はお話できてよかったわ。
お屋敷まで送って差し上げたいけれども、
次の予定が迫っているので、
駅までお送りするわ。
よろしくて」
麗華は、気持ちを切り替えて、誘いを断ったパーティに、
顔を出す気分になっていた。
「はい、ありがとうございます」
麗華は、祐雫への沸々とした怒りが凪(な)いで、
慶志朗への想いが少し吹っ切れた気がしていた。
そして、姉のような気分で、
祐雫の淑女への成長を楽しみにする気持ちが芽生えていた。
(わたくし以上の淑女になる日が楽しみだわ。
慶志朗に相応しい女性になっていく祐雫さんを
見届けるのも面白いかもしれないわ)