祐雫の初恋

「まぁ……

 今までそのように

 褒めていただいたことがございませんので、

 とても恥ずかしゅうございます」


 祐雫は、頬を薄紅色に染めて俯きながら、

不思議な気分に包まれていた。


 今まで誰の前でも物怖じしたことがなく、

凛と胸を張って相手の瞳を見つめて

話をするようにしていた。

 それが慶志朗の前では、

真っ直ぐに瞳を見つめて話すことが出来なかった。

 普段の祐雫らしからぬ装いのワンピースが

慶志朗の瞳に留まったことにも戸惑いを感じていた。


 そして、可憐なワンピースを纏った所為か、

陰を潜めていた祐雫の乙女心が呼び覚まされていた。


(普段にお逢いしてございましたら、

 気に留めていただけなかったのかしら。

 今日の祐雫は、祐雫らしくございませんのに)


 祐雫は、こころの中で呟いた。

< 11 / 154 >

この作品をシェア

pagetop