祐雫の初恋
それぞれの道
優祐のしあわせ
学校を終えた祐雫は、図書館の近くで級友たちと下校する優祐の姿を
見つけて、一緒に帰ろうと駆け寄りかけた。
「桜河さま」
可憐な声が優祐を呼び止め、
祐雫は、咄嗟に木立の陰に身を隠した。
身を隠してから、自身の行動に疑問を感じて
(どうして、隠れたりしたのかしら。
環(たまき)さんは、級友なのですもの、
ご一緒してもおかしくはございませんでしたのに)
と呟いた。
「こんにちは。藤澤さん」
優祐は、振り返り藤澤環(ふじさわ たまき)を見つめた。
環は、白百合女学院高等学校で、祐雫と同じ組だった。
何度か祐雫が家に連れて来て、その時に話をしたことがあった。
透き通るような色白の肌と淑やかなしぐさが美しい娘だった。