祐雫の初恋
「桜河さまに数学を教えていただきたくて。
祐雫さんにお聞きしたのでございますが、
桜河さまでございましたら解るのではと
薦めてくださいましたので」
環は、臆することなく優祐を見つめて話しかけた。
「祐雫に解けない問題が、ぼくに解るかなぁ。
祐雫の薦めなら、断るわけにもいかないね。
図書館で見てあげよう。
じゃあ、杉、山野、また明日」
優祐は、一緒に帰っていた級友たちに手を振り、環に微笑む。
級友たちは、囃(はや)し立てるように優祐の肩を叩いて帰っていった。
(私は、数学の問題なんて質問されてございませんし、
私に解けない問題が、優祐に解けるわけがございませんのに)
祐雫は、こころの中で呟いて、
探偵さながら、気付かれないように、優祐と環の後を追った。
優祐は、資料室の奥手にある学習室へ環を誘った。
学習室は、無人でひっそりと静まり返っていた。