祐雫の初恋
新緑に囲まれた静かな学習室の窓辺の席に、
環は、優祐と並んで腰かけた。
窓の外の新緑が反射して、環の美しい黒髪に光の輪を作っていた。
環は、鞄から数学の教科書と帳面を出して広げ、
寄り添うように身体を近づけた。
環の甘い香りが優祐のこころを捉えた。
祐雫の香りは意識したことがなかったが、
祖母の薔薇の香り、母の桜の香りとも違う香りだった。
(女子って、いい香りだなぁ)
優祐は、思わず息を吸い込む。