祐雫の初恋
「祐雫、何だか元気がないね。
もしかして変な誤解をしているのでは」
二人は、桜河の土手沿いの道に出た。
祐雫は、先程から感じていた背後の刺さるような痛みから解放されて、
ほっと溜息をついた。
「変な誤解とは、どのようなことでございますか」
祐雫は、声を荒げて優祐に問いかけた。
「ほら、何だか怒っているじゃないか。
ぼくは、何も悪いことはしていないはずだよ。
祐雫は、繊細で傷付きやすいのだから、
勝手に誤解しないでほしいな」
優祐は、祐雫の額を小さく突いた。
「優祐が恋をしたからって、
傷つきはいたしません」
祐雫は、こころを見透かされたことに、
尚更歯痒い気持ちに陥っていた。
今まで、姉のような気分で優祐を見下ろしていた祐雫だったが、
このところ優祐は、精神的な成長を見せ、
穏やかな優しさで祐雫を包んでいるように感じられた。
「別に恋をしたわけではないけれど、
女子っていい香りだなぁと思って。
祐雫からは何故しないのか不思議だけれど」
優祐は、こころの疑問をそのまま言葉にした。
今まで同じ年の祐雫と毎日接しているので、
別段女子を意識することもなかった。
「私が女子ではないって、おっしゃりたいのでございますか。
いつも一緒にいて香りが同化しているからではございませんの」
祐雫は、激しく反論した。
「同化・・・・・・
確かに双子だから、
ぼくには祐雫の考えていることが、手に取るように分かるものね」
優祐は、むきになった祐雫の顔をみつめて穏やかに答えた。