祐雫の初恋

「嘘でございましょう。


 私には優祐の考えていることは分かりませんわ」


 祐雫は、驚いて優祐を見上げる。



「だって、ぼくは祐雫の兄だもの。


 それに父上さまの跡を継いで、

 桜河の家や桜河電機を守っていかなければならないのだから、

 人の気持ちを理解できる人間になるように

 これでも努力しているのだよ。


 桜河電機で働く人やその家族全員を

 守っていく使命を与えられているのだもの」


 頭ひとつ祐雫よりも身長が高くなった優祐は、

威厳を持って祐雫を見下ろした。


 父の光祐に似で凛とした美しさを持ち合わせている祐雫は、

優祐の学友の間でも、人気を博していたが、

勉学に一生懸命で、世間の評判に疎かった。


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