祐雫の初恋
「桜河電機の娘さんは、成績優秀の才女で
ゆくゆくは長男の優祐くんを差し置いて、
社長に就任するのではと聞いていたけれど、
噂と違って可愛らしい方ですね。
どうして晩餐会で気付かなかったのだろう」
慶志朗は、祐雫の瞳を見つめて、
晩餐会の顔触れを思い出していた。
「晩餐会には、伺ったことがございませんの」
普段の祐雫であれば
「どうして女の私が社長ではいけませんの」
とむきになって反論していた筈なのに、
世間の風刺さえも耳に入らず、
慶志朗の微笑みと声の響きにうっとりと酔いしれていた。