祐雫の初恋
「先日、麗華嬢と乗馬会に来ていたでしょう。
麗華嬢とは親しいのですね」
他人に関心を示さない麗華が、珍しく年下の祐雫を伴い、
乗馬初体験の祐雫を丁寧に指導していた姿が真実の印象に残っていた。
「失礼いたしました。
乗馬会でお会いしてございましたの」
祐雫は、真実の顔を真っ直ぐに見つめて、記憶を辿ってみるのだが、
全く思い出せなかった。
「そういえば、先程、嵩愿と親しげに話をしていたけれど、
嵩愿とは付き合っているの」
真実は、麗華と琳子との婚約を解消して以来、
女性と一緒にいる姿を見たことがなかった慶志朗が、
珍しく祐雫と会話していたので、興味を持った。
「お付き合いなどは……
時折、お話することはございます。
嵩愿さまは、お忙しいお方にございますので」
祐雫は、真実の問いに顔を赤らめる。
(慶志朗さまをお慕い申し上げてございますが、
慶志朗さまのお気持ちは全く掴みどころがございません)
祐雫は、慶志朗から受け取った小さなメモを入れたバッグを
想いを籠めて、強く抱きしめる。
真実は、祐雫の手を取って、真剣に訴える。
「祐雫さん、それでは、ぼくと付き合いましょう」