祐雫の初恋

 祐雫は、突然の真実の言葉が、よく理解できなかった。


(先程お逢いしたばかりでございますのに……

 藤原さまは、私をおからかいでいらっしゃるのかしら)


 祐雫は、驚きで言葉が出ずに、

真実の心中を探るように、真剣なまなざしで顔を見つめた。


「恋愛に、はじめても何もありせん。


 ぼくは、祐雫さんに魅せられたのです」


 こういう場合の対処法を祐雫は、学習していなかった。


(純文学では、どのように切り返していたかしら)


 真実は、祐雫の腕を取り、長手袋の上から、手の甲に口づけた。
 
< 132 / 154 >

この作品をシェア

pagetop