祐雫の初恋

「さぁ、祐雫さん、


 嵩愿家の探検へ出発しましょう」


 慶志朗は、靴を脱いで、座敷へと上がると、祐雫に手を差し伸べる。


 祐雫は、慌てて靴を揃えて、慶志朗に従う。



「探検でございますか」


 慶志朗は、奥の廊下から伸びる木製の階段を祐雫の手を引いて上って行く。


 急な階段は、延々と続いているように感じられた。


 祐雫は、慶志朗の手に掴まれば、どこまでも行けそうな気がして、

何段もの階段を上った。


 
「到着です」



 階段の先には、見晴らし台があり、嵩愿家のお屋敷はもちろんのこと、

街全体の景色がぐるりと見渡せた。


 陽射しが燦々と照りつけているにもかかわらず、涼風が吹き渡り、

高い屋根のお陰で、夏の暑さを忘れるほどだった。



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