祐雫の初恋
どれくらいの時間が過ぎたのか……
通り雨が去って、眩しい陽射しが窓から射し込んで、二人を照らした。
慶志朗は、静かに祐雫を離した。
「家の中にいるのに祐雫さんは、雨に打たれたようですね」
慶志朗は、優しいまなざしを向け、
突然の口づけに驚いて、感動の涙を零す祐雫の頬を指で拭った。
祐雫は、瞬きをして、涙の輪が広がる視界の中の慶志朗を見上げた。
頭の中が、真っ白……
ではなく淡い桜色に染まり、何も言葉が出て来ない。
「祐雫さん、ここから見る石庭が一番美しいのです。
嵩愿家の家紋の形が描かれているのです」
慶志朗は、何事もなかったように石庭の話題に切り替えた。
祐雫は、夢見心地のまま、慶志朗の左腕に寄り添っていた。