祐雫の初恋
「祐雫さん、こちらへ」
慶志朗は、祐雫の手を引いて、踊り場横の扉を開けると、
屋根付きのテラスに出た。
「雷雨の後には、虹が出るはずです。
特に祐雫さんと一緒のときには、必ず出るはずです」
慶志朗は、雨雲の先を指示した。
「まぁ、副虹(ふくこう)でございます。
仲良しの虹にございますね」
祐雫は、(慶志朗さまと私のよう……)
と心の中で感じ入っていた。
慶志朗は、しばらくの間、無言で副虹を見つめていた。
「祐雫さん、大切なおはなしがあります」
慶志朗は、何時になく真面目な表情になって口籠る。