祐雫の初恋
「夕立だから、すぐに止むでしょう。
雨が止んだら、
東野邸の近くまで送って行きましょう」
慶志朗は、硝子越しに雨雲を見上げて
優しく祐雫に話しかけた。
祐雫は、自分らしくない自分に気が動転していた。
今まで雷をこれほどまでに怖いと感じたことがなかった。
祐雫は、唇を噛み締めて
潤んだ瞳を慶志朗に気付かれないようにと
俯いていた。
慶志朗の前では、何故だか甘えん坊な気分になってしまう
自分がいる。
「はい」
祐雫は、声が震えて返事をするのがやっとだった。