祐雫の初恋
「坊ちゃま、酷い雷でございましたね。
私は、怖くて布団を被ってございました。
お嬢さまもさぞ怖かったことでございましょう」
詩乃が部屋の扉を叩いて顔を出した。
「詩乃さんは、雷嫌いでしたものね。
大丈夫ですよ、
別荘には避雷針が付いているので雷は落ちません。
雨が止みましたから、
お客さまを送って来ます」
慶志朗は、テラスに続く扉を開けた。
大雨で洗われた森の香気が一斉に部屋に流れ込んだ。