祐雫の初恋
突然、木立の切れ間から、七色に輝く虹が浮かび上がった。
慶志朗は、切り込んだ崖の端まで行くと
紺碧に変わりつつある空の大きな虹を指差す。
「祐雫さん、ご覧なさい、大きな虹の橋です」
「まぁ、なんて綺麗な虹でございましょう」
祐雫は、虹の壮大な美しさに言葉を失った。
肩で息をしていたはずが、虹をみた瞬間、
深呼吸をした気分になっていた。
「ここから見える虹は、世界で一番美しい虹だと思っています」
深緑の山から山へと七色の虹が鮮やかに架かっていた。
その虹の橋がゆっくりと二人の上空を移動して行った。