祐雫の初恋
「こちらこそ、
お茶の時間に付き合ってくれてありがとう。
それでは、ここで。
御機嫌よう」
慶志朗は、東野邸の門まで祐雫を送り届けると、
踵を返した。
「お送りくださいまして、
ありがとうございました。
それでは、御機嫌よう。
さようなら」
慶志朗に手を引かれた右手を左手で包みながら、
祐雫の頬には、大粒の涙が光っていた。
祐雫は、門前に佇み、
慶志朗が森の中に見えなくなるまで見送った。