祐雫の初恋
「祐雫さんは、青い色がお好きですか」
慶志朗は、祐雫の白い襟が映える
天高い秋空のような青いワンピース姿に視線を留めた。
避暑地で見かけた愛らしい白いワンピースとは異なり、
鋭敏な雰囲気が前面に出ていた。
「お二人で決めかねているのでしたら、
ぼくのアドバイスを……
桜河電機の会長は、浪漫溢れる方ですので、
薔薇色の格子が華やかでいいと思いますよ。
代わりに青好きの祐雫さんには、
こちらを差し上げましょう。
来週の音楽会のチケットなのですが、
父母が都合で行けなくなりましたので、
よろしければお二人でいらっしゃいませんか」
慶志朗は、胸ポケットから、
音楽会のチケットの入った青い封筒を取り出して、
祐雫に差し出した。
「ありがとうございます。
父に伺いませんとお返事できませんが、
いただいてもよろしゅうございますか」
差し出された封筒を受け取るために
祐雫は、優祐の横に並んだ。
「どうぞ。凛々しいお嬢さまにぴったりの音楽会ですので、
優祐くんと是非いらしてください。
それでは」
「ありがとうございます、嵩愿さま」
「ありがとうございます。ごめんくださいませ」
慶志朗は、優祐と祐雫に会釈して人込みの中に姿を消した。