祐雫の初恋
優祐の成長
優祐は、祐雫に頼まれて、夕食後に父・光祐の書斎に赴いた。
「父上さま、
偶然にお会いした嵩愿慶志朗さまから、
今週末に開催される音楽会の招待状を戴きましたので、
祐雫と共に伺ってよろしいでしょうか」
優祐の神妙な顔を見つめて、光祐は、静かに口を開いた。
「優祐は、祐雫に付き合ってあげたいと思っているのだね」
「父上さま、ご存知でしたか」
優祐は、光祐の穏やかな声に安堵する。
「母上から聞いているし、
最近の祐雫の立ち振る舞いを見ていると
恋をしているってことくらい分かるよ。
優祐は、どう思う。
嵩愿家は、これから先、
桜河電機のキーパーソンになる会社だと思っている。
協調するのか敵対するのか先を見越して
お付き合いをしなければならない」
光祐は、穏やかな表情の中に毅然とした態度を示した。