祐雫の初恋
「そうか。
優祐にとってお屋敷は、ある意味、災難だね。
ところで、神の森はどうだったの。
忙しくしていて、話を聞いてなかったね。
まぁ、掛けなさい」
光祐は、優祐との時間(いま)を大切にしたくて、椅子を勧めた。
この夏休みにも、優祐は、神の森に滞在していた。
光祐は、忙しくて優祐の話を聞いていなかった。
「ぼくは、お爺さまと好きな時間に
神の森を散歩して過ごすのですが、
びっくりするくらい穏やかな森になりました。
冬樹叔父さまは、すっかり神の守の風格を持たれて、
今では母上さまのように癒しのお力を発揮されています。
ぼくは、神の森で二週間過ごすと
残りの一年間をとても気持ちよく送ることができます。
神の森では、壮大な視野で物事を考えることができて、
自信が漲るようになります」
優祐は、神の森の香りに包まれたように
爽やかな気分で話をした。
「優祐がいない二週間は、こちらは淋しいが、
そのような体験ができるのは、素晴らしいことだね。
世間では、体験できないことを身体中で体験できるのだからね。
優祐、私が忙しい時には、桜河のお屋敷をしっかりとお願いするよ」
光祐は、祐雫の初恋と優祐の成長を快く感じていた。