祐雫の初恋
「よろしければ、今からお茶の時間なのですが、
付き合ってもらえませんか」
別荘の表札には【嵩愿邸】とあった。
今まで、着飾って晩餐会に出かけるくらいなら、
勉学に勤しみたいと常々思っていた祐雫には、
嵩愿家が何処のお屋敷なのか分からずに、
珍しく気後れしていた。
「よろしゅうございますの。
お邪魔ではございませんか」
祐雫は、突然のお茶の誘いに躊躇しながらも、
慶志朗の笑顔に惹き寄せられていた。
「詩乃さん、
可愛いお客さまがいらっしゃったので、
お茶をお願いします」
慶志朗は、祐雫が安心するように、
別荘の中に声をかけた。
「はい、かしこまりました。坊ちゃま」
すぐに中から返事が返ってきた。