祐雫の初恋
「はい、畏まりました。
その先を右折されて、
桜川沿いを真っ直ぐに下ってくださいませ。
あの、嵩愿さま、
お時間は、ございますか」
祐雫は、桜池の夕暮れを慶志朗に見せたいと思い立ち、
慶志朗の予定が気になった。
「今日の予定は、会社の晩餐会が7時から入っているだけで、
当面は、祐雫さんを送っていくのが最優先の予定です」
慶志朗は、気紛れで祐雫を見に来たつもりが、
家まで送っていく気持ちになっている自身に驚いていた。
「よろしければ、少し寄り道をして、
先日の虹のお礼をさせていただきとう存じます。
次の橋を右折くださいませ」
祐雫は、運転中の慶志朗の横顔を
ドキドキしながら、時折盗み見た。