祐雫の初恋

 慶志朗を慰めようとする祐雫の気持ちがじわじわと伝わった。


 その真剣なまなざしは、慶志朗の胸に美しい肖像として刻み込まれた。



(初恋と真実の愛……)



 考えたことがない単語だった。



 大学入学祝の祝賀会で、

父から麗華を許嫁候補だと紹介され、

そのすぐ後に、母から幼馴染の琳子を許嫁に推された。


 どちらも類希なる良家の子女で、

嵩愿家に引けを取らなかった。


 麗華は、その名の通り絢爛豪華な才女で、

一緒にいて同等に光り輝くことができ、退屈しなかった。


 反対に琳子は、慎ましく心配りが行き届いた淑女で、

一緒にいて寛げる存在だった。


 どちらも許嫁としては非の打ちどころがなかった。


 しかし、愛情を感じるかといえば疑問が残った。


 それもあり、二人とは、エスコートするときに、

手を添えるだけの清い付き合いだった。

< 73 / 154 >

この作品をシェア

pagetop