祐雫の初恋
慶志朗を慰めようとする祐雫の気持ちがじわじわと伝わった。
その真剣なまなざしは、慶志朗の胸に美しい肖像として刻み込まれた。
(初恋と真実の愛……)
考えたことがない単語だった。
大学入学祝の祝賀会で、
父から麗華を許嫁候補だと紹介され、
そのすぐ後に、母から幼馴染の琳子を許嫁に推された。
どちらも類希なる良家の子女で、
嵩愿家に引けを取らなかった。
麗華は、その名の通り絢爛豪華な才女で、
一緒にいて同等に光り輝くことができ、退屈しなかった。
反対に琳子は、慎ましく心配りが行き届いた淑女で、
一緒にいて寛げる存在だった。
どちらも許嫁としては非の打ちどころがなかった。
しかし、愛情を感じるかといえば疑問が残った。
それもあり、二人とは、エスコートするときに、
手を添えるだけの清い付き合いだった。