祐雫の初恋

「将来の夢は、社長になることですか」


「はい……いいえ、あの……」


 祐雫は、慶志朗の手に包まれて、

素直に本心を吐露していたことに気がつくと

赤面して手を離した。


 いつもと違う慶志朗に乗せられていた。



「可愛いだけの女性ではないと思っていましたが、

 世間の評判もまんざら違ってはいないようですね」


「あの……

 以前は、社長になりとうございました。

 優祐よりも成績の良い私が社長に相応しいと思ってございました。


 でも、私は、自身のことだけを考えておりましたが、

 優祐は、広い世界観で様々なことを捉えておりまして、

 敵わないことがわかりました。


 それに父上さまは、世襲制を廃されて、

 逸財を後継者にともお考えのようでございます。


 ただ、私は、お勉強すると新たな事が発見できまして、

 とても嬉しゅうございますの」



「ぼくも祐雫さんと話していると

 新たな事が発見できて楽しいですよ。


 先程から、あの……ばかり呟いていますが、

 ぼくの前では普段の祐雫さんそのままでいてください。

 取り繕うことなどありませんよ」


 慶志朗は、聡明でありながら、

可憐さを併せ持っている祐雫を理解した。

< 75 / 154 >

この作品をシェア

pagetop