祐雫の初恋
「将来の夢は、社長になることですか」
「はい……いいえ、あの……」
祐雫は、慶志朗の手に包まれて、
素直に本心を吐露していたことに気がつくと
赤面して手を離した。
いつもと違う慶志朗に乗せられていた。
「可愛いだけの女性ではないと思っていましたが、
世間の評判もまんざら違ってはいないようですね」
「あの……
以前は、社長になりとうございました。
優祐よりも成績の良い私が社長に相応しいと思ってございました。
でも、私は、自身のことだけを考えておりましたが、
優祐は、広い世界観で様々なことを捉えておりまして、
敵わないことがわかりました。
それに父上さまは、世襲制を廃されて、
逸財を後継者にともお考えのようでございます。
ただ、私は、お勉強すると新たな事が発見できまして、
とても嬉しゅうございますの」
「ぼくも祐雫さんと話していると
新たな事が発見できて楽しいですよ。
先程から、あの……ばかり呟いていますが、
ぼくの前では普段の祐雫さんそのままでいてください。
取り繕うことなどありませんよ」
慶志朗は、聡明でありながら、
可憐さを併せ持っている祐雫を理解した。