祐雫の初恋
夕日が桜山に反射して、桜池一面を虹色に輝かせた。
虹色の光は、慶志朗と祐雫を包みこんでいった。
「嵩愿さま、ご覧くださいませ。
世界一綺麗な虹のお礼でございます」
慶志朗の瞳には、緋色に包まれた満開の八重桜のような祐雫が映っていた。
慶志朗は、聡明な黒い瞳の奥に
しっかりとした強さを持つ祐雫を愛おしく感じていた。
「素晴らしいお礼をありがとう。
そう、祐雫さんは、祐雫さんですよ。
ぼくの前では、素直な祐雫さんでいてください」
慶志朗と祐雫は、寄り添って、桜池の夕日を眺めていた。
慶志朗のこころには、『真実の愛』という言葉が刻み込まれた。