祐雫の初恋
「竣太朗にしてみれば、
弟の總司朗 (そうしろう)のところの總大(そうた)が
手薬煉引いて控えておるから、
それ故に早く慶志朗の身を固めさせて、
しっかりと後継ぎとして据えたいのだろう。
總大は、總司朗に似て、要領がよいからなぁ。
私は、真っ直ぐな性格の慶志朗を信じておるぞ。
何といっても私の名を分けた孫だからね」
慶之丞は、初孫でもあり、自身の『慶』の字を受け継いだ慶志朗を
こよなく可愛がっていた。
また、慶志朗の自由奔放さを愉快に思い、理解もしていた。
「さようでございますね。
竣太朗さんは、石橋を叩いて渡る性格でございますもの。
風のように渡る慶志朗さんをはらはらして
ご覧になってございましょう。
總大さんは、 実直な性格でございますので、
あなたが飛んで行ってしまいましたら、
嵩愿グループは、總大さんに
転がり込むわけでございましょう」
従弟の總大は、慶志朗より二つ下で、堅実な性格だった。