祐雫の初恋
「それはそうと桜河電機の嬢と近付きになったそうだね」
慶之丞は、未知なる祐雫のことが気になった。
まだ一度もその顔を見たことがなかった。
「それも父上からお聞きになられたのですか」
突然の祐雫の話題に、慶志朗は、驚いた。
「竣太朗は、早速身上調査したらしいが、
聡明過ぎるくらいの女学生らしいな。
双子の兄と跡目争いをしているとか。
今まで意識しておらなかったが、
桜河電機の業績はなかなかのものだ」
「身上調査までしたのですか。
父上は、気が早過ぎます。
近付きになったと言っても、挨拶程度です。
それに祐雫さんは、確かに聡明ですが、
巷(ちまた)で噂されているような娘さんとは全く違います」
慶志朗は、思わず祐雫を擁護(ようご)していた。
「まぁ、挨拶程度でございますのに、お詳しいこと」
「ははは、楽しみじゃな。
慶志朗から、娘児(むすめご)の名が出るとは
思ってもみなかったぞ」
慶志朗は、慶之丞と千子に乗せられてしまっていた。