祐雫の初恋

「慶志朗、

 正直におっしゃって。 


 わたくしではなく、

 琳子と結婚することに決めたのかしら。


 慶志朗には、神妙な顔は、似合わなくてよ。

 わたくしは、大丈夫。


 殿方は、慶志朗だけに限らないもの」


 麗華は、優雅な笑みを浮かべて、苺タルトを口に運ぶ。

 麗華は、この微笑みが巷(ちまた)の男性たちを魅了することを心得ていた。

 ただ、今の慶志朗には通用しないことも……残念ながら薄々感じていた。


「ありがとう、麗華さん。

 そして、この通り申し訳ないです。


 琳子さんと結婚するわけではありません。

 実は、琳子さんとも婚約を解消します。


 ぼくは、しばらく自由に世界を見て歩こうと思っています。

 そのために御二方の婚期を遅らすことはできません」


 慶志朗は、こころを籠めて、丁寧に頭を下げた。

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