祐雫の初恋
「ご馳走さま。
ここでお別れしましょう。
御迎えには事欠きませんもの。
両親にはわたくしから
別れを切り出したことにしておくわ。
それくらいの我儘は聞いてくださるでしょう」
麗華は、食後の紅茶を飲み干すと、
顔色も変えずに席を立ち、
気品あふれる笑顔を慶志朗に投げかける。
それから、振り向くことなく、レストランを後にした。
慶志朗は、麗華の後ろ姿が扉の向こうに消えるまで、
麗華の背中を見つめ、気品あふれる態度に安堵の深い溜息を吐いた。