祐雫の初恋
翌日の日曜日、
慶志朗は、琳子を茶室に招いた。
「慶志朗さま、
本日はお招きありがとうございます。
麗華さまがご一緒なされていないのは、
いかがされたのでございますか」
琳子は、訝(いぶか)しげな表情を慶志朗に向ける。
「ようこそおいでくださいました、琳子さん。
どうぞぼくの点てたお茶を召し上がってください」
「喜んでいただきます」
慶志朗は、琳子に和菓子を勧めた。
琳子は、菖蒲(あやめ)の和菓子を手に取って見つめる。
「昨年は、慶志朗さまと麗華さまとご一緒に菖蒲祭りに参って、
大変楽しゅうございました。
慶志朗さまとこのように二人だけでお会いするのは、
初めてでございますので、
こころが揺れてございます」
琳子は、慶志朗の点てた茶の中に答えを見出そうと
茶碗を手に取って考える。