祐雫の初恋


「実は、婚約解消をお願いするために

 お呼びしました。

 誠に申し訳ないと思っています。


 しばらく結婚はせずに

 世界を見て歩きたいと考えています」


 慶志朗は、深々と手を付いて謝った。


「慶志朗さま、

 どうぞお顔をおあげくださいませ。

 そのように神妙なお顔をなされると

 琳子は悲しゅうございます。


 琳子は、正直に申しますと、

 慶志朗さまの妻になりとうございました。


 それでも、麗華さまが第一許婚でございましたので、

 こころの準備はできてございました。


 慶志朗さまは、紳士的にお付き合いくださいましたし、

 琳子のことは、何もご心配なさらなくてよろしゅうございます。


 琳子は、お見合いをして、

 相応しい殿方の元へ嫁ぎます」


 琳子は、さばさばとした笑顔を見せて、慶志朗へ微笑む。

 今まで誠心誠意で慶志朗に接していたので、悔いはなかった。

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