祐雫の初恋
「ありがとうございます。琳子さん」
慶志朗は、琳子が涙を零して落胆するのではないかと思っていたが、
奥床しい琳子の力強さを感じていた。
「こちらこそ、ありがとうございます。
これからもお目にかかった時は、
お声をおかけくださいませ。
どうぞお元気で、
これからのご活躍をお祈り申し上げます」
琳子は、始終冷静で、穏やかな笑みを湛えていた。
琳子は、麗華が相手では敵わないと、
しっかりと自分の立場を学習し、弁えてもいた。
「琳子さん、お邸まで送って参ります。
そして、ご両親に深くお詫びを申し上げます」
慶志朗は、琳子の芯の強さに気が付くと同時に、
琳子の真髄を見ようともしなかった自身にも気が付いた。
確かにこのまま結婚しては、祐雫が言うように哀しい結末になる気がした。