夢はひそかに…できないっ *草食王子にkiss*

北川先生が足を止めたのは、美術準備室だった。


あ、ちなみに北川先生は美術担当の先生だ。




「ハイ、連れてきたわよん。後はお若いもんでよろしくぅ」


「え……北川先生っ」



北川先生は準備室に首だけを突っ込んでそう言ってから、僕の肩を叩いた。



「自分に正直に」


耳打ちでそう言い残して。


そんなひど…………っあ。



「せ……いじょう、くん」


やっぱり。


待っていたのは、さっきまでの僕のように、涙をボロボロと溢す花壁さんだった。




「星条くん……あたし」


「泣かないで」


「……え?」




さっき北川先生のおかげで落ち着いた涙腺が、再び緩み出す。


『自分に正直に』


それを心のなかで繰り返し、僕はまっすぐに花壁さんを見つめた。
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