夢はひそかに…できないっ *草食王子にkiss*

屋上に出ると、5月の暖かい陽気が僕らを包んだ。

先客が何人かいるが、まだ昼休みは始まったばかりで場所はたくさんある。




「てきとーにこの辺で食うか」



創太があぐらで座り込み、みんなで円を囲むようにして座った。




みんなでいただきます、と言ってから焼きそばパンの袋を開ける。



花壁さんはやっぱり、隣で心配そうに僕を見ている。

焼きそばパンを口に運ぶ……やっぱりチープな味。

でも不味くはない。


むしろ美味しいくらいだ。




「美味しいよ」


「よかった……」




花壁さんがほっとした顔で笑う。

まるで自分の料理を美味しいと言われたように、嬉しそうだ。





「そだ、優香。話あるからあとでお願い」


「……?わかったぁ」





長野さんと花壁さんは幼なじみらしく、ずっと仲が良い。


大人っぽい長野さんと、人懐こい花壁さん。

僕の目から見ても正反対だけど、息はぴったりだ。





「焼きそばサンドおいしーい!!焼きそばパンとは違うねぇ」


「だろ?あんま食うなよ……っておい!何完食しちゃってんだよ!」


「ごちそうさまでーす」


「てめ……っおい逃げんな!!」





福島さんが創太のパンを横取りしたらしい……。

食後にも関わらず、二人はおいかけっこを始めてしまった。




「ったく……子供なんだから。まぁいっか、いいタイミング作ってくれた」


「タイミング?」
< 78 / 79 >

この作品をシェア

pagetop