LAST LOVE
「ミユちゃん、体調はどう?」

「大丈夫です、すいません。急に休み取っちゃって」

「あー、いいよ。人は足りてるから」

店長が嫌味混じりにそう言って、ナンバーワンのナツキに、あたしとは比べ物にならないくらい明るい媚びた声で話しかけた。
どうせあたしは売れてないし、居なくたって関係ないことくらい分かってる。
でも、こんなあたしにだって常連の客は何人かいるんだ。
あたしを空気みたいに扱うのは構わないけど、心の中で思ってることを顔に出すんじゃねーよ、バカにすんな!
心の中で毒づいて、あたしは待機室に入った。
鏡の前でメイク直しをしながら、携帯でメールを打つ。

『今夜、会いたいなぁ☆ちょっとでいいから、ね♪』

同じ文章を他の客にもメールで送信してから携帯を閉じると同時に、ナツキが待機室に入ってきた。
ナツキとは半年前に同じタイミングでこのキャバクラで働き始めたのに、今ではもうかなりの差をつけられている。
ナツキはナンバーワンなのに、あたしは未だにナンバーにすら入れていない。
ナツキのヘルプにつくこともしばしばある。

「もう風邪治った?」

ナツキが横から話しかけてくる。
あたしは胸の中にあるこの嫉妬を、ナツキに悟られないように笑顔で「もう大丈夫」と答えた。
鏡に映る自分とナツキを見ていると、やっぱり美しさにも気品にも、見事に差がついていると思った。
あたしはナツキと同じ空間にいることに苦痛を感じて、待機室を出た。
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