定義はいらない
「お互い相手がいる同士ならいいじゃない。」

肩に回された腕に少し力が入り身体の距離が少し近くなる。

私は必死で次の言葉を考える。

「でも、私付き合いだしたばかりなので。」

「もう飽きてるから俺に付いて来たんじゃないの?」

「飽きるほど会ってないので。」


そう。

私と亮ちゃんは飽きるほど会っていない。


知り合ってから付き合いだすまで1ヶ月。

その間会ったのはただの1回もない。

つまり、付き合い出す前に1回会って知り合って

2回目のデートで付き合いだすことになった。

その時にキスもセックスも済ませて

3回目のデートは3日前。

うちに亮ちゃんが来て一緒に私の手作り料理を食べて

映画を見ながらセックスをするというベタなデート。

その3回だけ。

セックスは2回。

飽きられるはずはない。



「そう。」

さほど興味なく答えると、私の肩に回した腕を解くことなく

もう片方の手でコーラを口に運んだ。

「グラス、空いてるよ。」



私は仕方なく同じものをもう1杯注文した。
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