定義はいらない
トイレから出ると佐々山先生が待っていた。

「そろそろお開きにする?」

「松木先生がまだ食べてますよ。」

「あいつ、よく食べるよなぁ。」

「ほんとに。」

「この後さ、二手に分かれようよ。」

「まどか連れて帰るんですか?」

「いやいや飲みに誘うだけ。」

まどかは飲めないのに。

「いいですよ。たぶん私たちは飲み直さないですけど。」

「それはそれで任せる。」


2人で席に戻ると残された2人の会話はあまり盛り上がってなかった。

2人も解散を察していたらしい。

佐々山先生はもう会計を済ませていた。

こういうところが大人の男を感じさせる。

まどかの目は少し女の目になっている。


「ごちそうさまでした。」

私と松木先生はまどかと佐々山先生の背中を見送った。

「これからどうします?」

「鈴木さんのこと送りますよ。」

「いや、いいですよ。」

「俺、男だから。」

そう言ってタクシーを止めた。

男の人って大変だな、と思った。
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