定義はいらない
そして3月31日は訪れた。

松木先生最後の日、

私は夜勤だった。

わざと、松木先生が廊下を歩いて来た時に

私は物陰に隠れた。

ここで隠れていれば、挨拶もせずに終わる。

もう二度と会うことも連絡をとることもないだろう。

これで終わる。

物陰に隠れながら

こんなんじゃ、女が廃ると思い直した。

私は松木先生に胸を張れないような悪いことはしていない。

隠れる必要なんてないのだ。

廊下でバッタリと会ったように演技をした。

「あっ鈴木さん、ありがとうございました。
 いろいろお世話になりました。」

「今日で最後でしたっけ?お疲れ様でした。」

そして私たちは終わった。

もう2度と会うことはなく連絡をとることもない。



……はずだった。
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