定義はいらない
ある晩、メールが届いた。

「吉岡先生のこと聞いた?」


それはあの3月末以来の連絡だった。

「久しぶり」

の一言もないことに、松木先生らしさを感じて笑えた。


「お久しぶりです。吉岡先生のことって何?」

胸騒ぎの答えを持っていたのは松木先生だった。


「あっまだ聞いてないんだ。俺からはじゃあ言えないや。」


頭の中にクエスチョンマークがいくつもポンポンポンと浮かぶ。

片手のワインをテーブルに置いて、私はすぐに電話をかける。


「吉岡先生のことって何?」

「どうもどうも。」

「どうもどうもじゃなくて。」

「久しぶりの一言もないんだなぁ」


さっき私が思ったことを相手に言われるなんて

なんか癪だが今はそれどころじゃない。


「久しぶり。で?」

我ながら興奮していることに気付く。


相手に悟られないように冷静を装う。
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