定義はいらない
「なに、酔ってるの?」

「そっちもでしょ。」

「まあね。」


東京から長野までの300キロも

声を聞いていなかった2ヶ月間も

全てなかったかのように思えた2分間だった。

なかったのだ。

私と松木先生の間に距離も時間も。


「いやぁ、俺の口から言っていいか分からないからさ。」

「いやいや、もうそこまで言ったんだから言ってよ。」

「いずれ分かることだからいっか。」


それでも迷っているのか、少し黙った。


「吉岡先生さ、うちの病院に栄転するんだよ。」

「へぇ。」


驚いたけど、驚かなかった。


「栄転なんだ。」

「栄転だよ、すごいんだ。なんせ、うちの科の部長だからね。」

「へぇ。」

「あの若さで部長だよ。すごいよなぁ。」


やっぱり、私の見る目に間違いはなかった。

彼は出来る人だから。
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