定義はいらない
「いつから?」

「7月中旬からかな。」

「もうちょっとじゃん。」

「そうだよ。」

「だから、最近当直してないのかぁ。
 なんか当直してないなって思ってたんだよね。」

「それはたぶんまた別の理由。」

「え?」

「言うなよ。」

「うん。」


また、少し黙る。

私の気持ちだけ急く。

早く答えを言って欲しい。


「気付かなかった?最近すごい痩せたでしょ?」

「吉岡先生が?」

「そうそう。」

「最近って、松木先生は吉岡先生に長野行ってから会ってないでしょ?」

「先週うちの病院に挨拶来たから会ったんだけどさ、
 俺はびっくりしたよ。」

「なにに?」

「だから痩せて。」


それは答えじゃない。


「なんかやっぱり部長になるのにプレッシャーがかかるらしくてさ、
 食欲も落ちたし睡眠薬が無いと眠れないんだって。」



あぁ、

彼は彼なりに私と同じように地獄を抱えて生きていた。

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