定義はいらない
「そうなんだ。」

「久しぶりに会ったから気付いたってわけじゃないと思うんだけどなぁ。」

「最近、外来ばっかりやっててあんまり病棟では見ないからね。」

「そっかそっか。」

「薬飲んでたら確かに当直は出来ないね。」

「出来ないよ。だって堕ちてるんだもん。」


『堕ちてる』

そう、

『堕ちてた』


「相変わらず偉そうだね。」

「いやぁ、吉岡先生はメンタル弱そうじゃん。頑張ってるんだと思うよ。」


後輩のくせに上司のこと『メンタル弱い』って

何様だよってつっこみたくなる。

思わず笑ってしまう。


「出た、俺様発言。」

「うん、俺は王様だからね。」

「相変わらずだね。」

「相変わらずでしょ。」

「長野はどう?」

「寒いよ。そして田舎。」

「いいじゃん、田舎。」

「俺、4月の時点ですぐに飽きたよ。
 とりあえず信州蕎麦は食べに行ったけどね。」

「いいなぁ~。」

「美味しいけどね、でも食事のメインにはならないからなぁ。」

「松木先生よく食べるからね。」

「若いからね。」

「そう。食欲も性欲も衰えない。」

「衰えないんだ。」


「あれからセックスした?」

太朗ちゃんの栄転の話と

セックスの話。

私との不倫はどうやら太朗ちゃんの昇進の邪魔はしなかったようだ。
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