定義はいらない
「してない。」

「へぇ。」

本当は嘘だけど、真実を言う義理は感じなかった。

別に言ったところで彼は傷つかないと知っているけれど。

「松木先生は?」

「う~ん。してない。」

馬鹿だとは思うけど、少し嬉しくなる。

「してないんだ。」

「うん。」

「そっちの看護師で可愛い子いないの?」

「みんな主婦ばっかりだもん。」

「へぇ。」

「ナースステーションでオムツの話とかしてるよ。」

「不倫は?」

「嫌だよ。だいたい来たばっかりだし。」

「職場の人はめんどくさいしね。」

身をもって知っている。

「そうそう。」

「まぁ、長野いいじゃない?どうせ1年で東京に帰って来るんでしょ?」

「そのつもりだね。っていうか絶対そうだと思う。」

「満喫しなきゃ。」

「そのつもり。」

「いいなぁ。」

「意外だね、田舎好き。どっちかっていうとシティーガールっぽいのに。」

「よく言われる。」



「遊びに来たら?」
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