定義はいらない
あの有名な絵本みたいに机に線を引いて

「ここから先は入ってくんなよ、入ったらぶつからな。」

って言いたい。

すでに松木先生はズカズカと入って来ているけれど。

「切符代くらい払えるからいいよ。それに、先生には期待しているから。」

「ちょっと、俺のこと挑発してる?」

調子に乗って私の領域に片足どころか

ジャンプして両足着地してくる俺様男。

「そういう意味じゃなくて、美味しい料理食べさせてくれるってこと。」

「そういう意味ね。びっくりした、身体のことかと思った。」

2人して笑っちゃう。

この松木先生は、私の浮き沈みを全て左右しているみたい。

『みたい』じゃない。

左右されているのか。

「身体自信あるからね。」

「まあね。でも、この前つまんなかったんでしょ?」

「え?」

「だって全然濡れてなかったし。」

「分かった?」

「そりゃ分かるよ。痛いんじゃないかなって思ってた。聞いたじゃん。」

たしかに聞かれた。そして痛かった。

大きいからじゃない。

濡れなかったから。

私の心も身体も違う男でいっぱいで

松木先生には何も感じなかったから。

何も、何も。
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