定義はいらない
松木先生の車はすぐに分かった。

ベンツのマークに

区のナンバーは

四差路には一台しか止まっていなかった。

2ヶ月前と何も変わらない松木先生を運転席に認めて

私はトントンと窓を叩いた。

「遅くてすみません。」

「いいよ。何か見てたの?」

「駅ビルをうろついていたので、ちょっと時間かかっちゃった。」

「見るものあったっけ?」

「お土産とか。」

「ふ~ん。」

化粧を直していたからとは言いづらい。

「すぐに車分かった?」

「区ナンバーだからすぐに分かった。」

「よし、荷物入れよう。」

キャリーバッグを車に詰め込むと

私は助手席に案内される。

すぐにジブリのアニメのネコのキャラが目につく。

「なにこれ?」

「可愛いでしょ?」

「可愛い。」

「それ、大学時代から乗せてるんだよね。」

「つまり先生のカーセックスの目撃者ってことだね。」

「否めない。」

笑いながら車を発進させる。



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