定義はいらない
私は運転席の松木先生を見つめる。

本当に私は松木先生の助手席に座っているのだろうか?

あまり現実味がない。

二の腕が少し太くなったように見える。

前から細かったわけじゃないのに

少し太ったのだろうか?

前より丸くなった気がする。

「さぁ、ご飯には早いからどうしようか?」

「先生、終わるの早いですね。公務員みたいじゃないですか。」

「今日は早く終わらせたの!でも前よりは早く帰れるようにはなったよ。」

「仕事楽なんですか?」

「前よりはね。」

前を思い出す。

研修医の先生たちはいつも夜の9時とか10時まで残って

いろんな資料を集めたり論文書いたり

普段の業務ばかりじゃなくて雑用も忙しい。

その中でも松木先生は同期の研修医の中では

早く帰ってるほうだと思ってたけど。

一度、駅で夜の7時位に自転車に乗ってるのを見たことがある。

デパートの袋を持っていたからおそらく買い物をしていたはず。

余裕だな、あの人はってあの時は思ったけど

電話するようになってキャラを知ったら頷ける。


「よし。松本城に行こう。」

車は私の意見も聞かずに松本城に向かった。
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