定義はいらない
日曜日の夕方、松本駅まで愛車のベンツで送ってくれた。

「じゃあ、気をつけて帰ってね。」

「うん。本当にありがとうございました。」

「いやいや俺も楽しかったから。じゃあね。」

手を振って私はエスカレーターに乗る。

本当は期待していた言葉があった。

付き合おうって言葉、なかったなって思う。


でも、それでも良かった。

私はそれを望める身じゃない。

私は彼の上司と寝ていたんだから。

彼から望まれなかったら私から口には出せない。

寂しい。

寂しい。

もう彼と会えないかもしれない。

これが最後かもしれない。

そう思って焦ってメールを送る。

「本当に楽しかった。また行ってもいいですか?」

「いいよ~。」

安心する。

少なくともまだ捨てられた服ではないようだ。

太陽の光はまだ私に当たっていた。
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